本記事では、会社の業績を示す5種類の利益(売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益)について、それぞれの利益が示す意味と違い、計算方法について解説します。
会社の決算情報に出てくる5種類の利益の意味と違いを正しく知るすることで、ニュースがより深く理解できるようになったりします。ビジネスパーソンの常識でもありますのでこの機会に利益の種類について詳しくなりましょう。
5種類の利益の図解と一覧【営業利益、経常利益、純利益の違い】
日々の経済ニュースを見ていると、「トヨタ自動車の当期純利益が○○億円になりました。」「ソフトバンクの営業利益が前期比30%増になる見通し」など、企業の業績に関するニュースがいろいろと出ています。この企業の業績を示すのが、「利益」ということになるのですが、この「利益」という言葉には5つの種類があるのをご存じでしょうか。5種類の利益は以下の通りです。
<会社の業績を示す5種類の利益>
・売上総利益(粗利益)
・営業利益
・経常利益
・税引前利益(税引前当期純利益)
・当期純利益
それではこの5種類の利益について順番に解説をしていきます。
会社の利益の種類一覧図【売上総利益】最初に計算される利益
売上総利益とは?【損益計算書での計算方法】
売上総利益とは別名「粗利益」などともいわれ、損益計算書で会社の利益を計算するときに最初に計算される利益で、会社が行っている本業の取引から直接生じる利益のことです。具体例でいえば、小売業の会社が商品を仕入れて販売したときの、販売価格と仕入値の差額が粗利益になります。
株式会社の損益計算書上では、売上総利益は以下の計算式で算出します。
【売上総利益(粗利益)=売上高 – 売上原価】
売上総利益の意味と見方
売上総利益は、5種類の利益の中で最初に計算される利益のことで、粗利益や粗利などとも呼ばれています。
「売上総利益」は、「売上高」から「売上原価」をマイナスして計算します。
この 売上原価とは販売する商品・製品を作るための材料費や人件費であったり。外部から商品を仕入れるのに掛かったお金のことを言います。牛丼屋を例にとってみると、お客さんから受け取ったお金(売上高)から、牛肉やコメの購入費や牛丼を調理するアルバイトの人件費(売上原価)を差し引いた金額が売上総利益になります。
会社の利益の種類一覧図【営業利益】会社の本業による儲けを示す指標
営業利益とは?【損益計算書での計算方法】
営業利益とは、会社の経営成績のうち本業から出た儲けを表す利益です。例えば、製造業の会社であれば、モノを作って売るというのが彼らの本業なので、それ以外の預金の利息収入であったり、会社で持っている株式から得られる配当金などをのぞいて計算したのが、営業利益になります。
株式会社の損益計算書上では、営業利益は以下の計算式で算出します。
【営業利益=売上総利益 – 販売費及び一般管理費】
営業利益の意味と見方
「営業利益」は、先ほどの「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」をマイナスして計算します。
「販売費」とは、商品を売るために掛かった広告費であったり営業マンの人件費などが該当します。また、「一般管理費」とは、会社の経理部門や総務部門の人の人件費であったり、事務所や店舗を借りるための賃借料などが該当します。
営業利益は、会社の本業から得られる利益を示す指標として、会社の経営目標にされることも多くとても重要な項目です。
会社の利益の種類一覧図【経常利益】本業・本業以外から毎期出る儲け
経常利益とは?【損益計算書での計算方法】
経常利益とは、会社の経営成績のうち臨時的・突発的にでるもの以外を集計したときの利益のことです。長い間、会社を経営していると例えば何十年かに1回のレベルの地震被害にあったり、事業所の建物を取り壊したりといった臨時的な損益がでることがあります。会社の経営成績からこういったものを除いて計算したのが経常利益になります。
株式会社の損益計算書上では、経常利益は以下の計算式で算出します。
【経常利益=営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用】
経常利益の意味と見方(営業利益との違い)
「経常利益」は、先ほどの「営業利益」に、「営業外収益」をプラスして、「営業外費用」をマイナスして計算します。
「営業外収益」とは、会社が本業以外で稼いだ儲けのことを言い、銀行に預けらお金から発生する受取利息や、余剰資金で購入した株式からの配当金などが該当します。反対に「営業外費用」とは、会社が本業以外で支払う費用のことを言い、銀行から借り入れをした場合に支払う利息であったり、受取手形を銀行で割り引いてもらった時の利息相当額などが該当します。
経常利益を見ることで会社が本業・本業以外も含めて、毎期どれくらいの儲けを出す力があるかを見ることができます。
★ポイント★
<営業利益と経常利益の違い>
・営業利益 → 本業から出る儲け
・経常利益 → 本業と本業以外から出る儲け
会社の利益の種類一覧図【税引前当期純利益】今年一年の業績を示す指標
税引前利益(税引前当期純利益)とは?【損益計算書での計算方法】
株式会社の損益計算書上では、税引前当期純利益は以下の計算式で算出します。
【税引前当期純利益=経常利益 + 特別利益 – 特別損失】
税引前利益(税引前当期純利益)の意味と見方【経常利益との違い】
「税引前当期純利益」は、先ほどの「経常利益」に、「特別利益」をプラスして、「特別損失」をマイナスして計算します。
「特別利益」とは、臨時的又は一時的に出た金額の大きな利益のことを言います。例えば、会社の自社ビルと土地を売却して利益が出た場合や、保有する取引先の株式を大規模に売却して利益が出た場合などが特別利益に該当します。
反対に「特別損失」とは、臨時的又は一時的に出た金額の大きな損失のことを言います。例えば、会社の自社ビルと土地を売却して損失が出た場合や、保有する取引先の株式を大規模に売却して損失が出た場合などが特別損失に該当します。また、火災や災害などで工場が倒壊した、というようなケースも特別損失となります。
税引前当期純利益を見ることで、今年一年間の会社の業績がどうであったかを知ることができます。しかし、税引前当期純利益には、臨時的に発生した項目(特別利益・特別損失)が含まれてしまうため、会社の儲けを出す力を見たい場合には、臨時的な項目を除外している経常利益を見るのが望ましいと言えます。
★ポイント★
<経常利益と税引前当期純利益の違い>
・今年一年間の業績を見たい → 「経常利益」を見る
・会社が毎期稼ぎ出す力を見たい → 「税引前当期純利益」を見る
会社の利益の種類一覧図【当期純利益】企業の最終的な儲け
当期純利益とは?【損益計算書での計算方法】
株式会社の損益計算書上では、当期純利益は以下の計算式で算出します。
【当期純利益=当期純利益 – 法人税等】
当期純利益の意味と見方
「当期純利益」は、先ほどの「税引前当期純利益」から、「法人税等」をマイナスして算出する、会社の最終的な利益のことを言います。
「法人税等」とは、会社が事業活動を行って出した儲けに対して掛かる税金のことで、法人税、住民税、事業税などが該当します。現行の税制では、企業の儲けに対して約30%の法人税等が課されます。
なお、法人税等は会社が出した儲けに対して課される税金なので、会社が赤字の時には基本的に法人税等は課されません。
会社の「当期純利益」を見ることで、会社が一年間でどれだけ手持ちの資産を増やしたかを知ることができます。
株式会社の利益一覧図【損益計算書の英語版】
上場企業をはじめ海外進出をしている企業では、英文の損益計算書をみることも多いと思います。英語の損益計算書での利益の種類についてもこの機会に覚えておくと良いと思います。
<株式会社の利益一覧【損益計算書の英語版】>
日本語 | 英語 |
売上総利益 | Gross profit |
営業利益 | Operating profit |
経常利益 | Ordinary profit |
税引前利益 | Profit before income taxes |
当期純利益 | Profit |
まとめ:5種類の利益の図解と一覧【営業利益、経常利益、純利益の違い】
会社の業績を示す5種類の利益についてご理解いただけたでしょうか。営業利益と経常利益の違い、経常利益と当期純利益の違いを知ることで、ニュースがより正確に理解できるようになるだけでなく、上司に「おっ、よくわかってるな」と思ってもらえるかもしれませんよ。