自己株式を購入する目的は?取得・消却・売却の仕訳

最近、新聞やニュースで自己株式の取得(自社株買い)をする企業がよく報じられるようになりました。今回は「自己株式って何?」「なんで発行した株式をわざわざ買い戻すの?」といった疑問を本記事で解決していきたいと思います。

 

自己株式を購入する目的は?取得・償却・売却の仕訳

自己株式を購入する目的は?取得・消却・売却の仕訳

自己株式とは?

株式会社は出資者からお金を集める代わりに株式を発行し、そこで集めたお金で事業を運営しています。ここで発行した株式のうち、株式会社が出資者から買い戻した株式を自己株式と言います。

 

自己株式・・・株式を発行した会社が買い戻した自社の株式のこと

 

買い戻した株式(自己株式)は、そのまま企業に保有され続けたり、売却や消却などの処理が行われることになります。

 

 

自己株式の取得(自社株買い)をする企業は増えている

最近は新聞やニュースで自己株式の取得をする企業を見かけることが多くなりました。

 

<自己株式の取得を発表している企業>

ソニー 2,000億円(2019年)

キヤノン 500億円(2019年)

KDDI 1,500億円(2019年)

三菱地所 1,000億円(2019年)

 

このように大手企業がこぞって自己株式の取得を行っていますが、そもそも企業はなぜ自己株式の取得をしようとするのでしょうか。

 

 

自己株式の取得の目的とメリットデメリット

なぜ株式会社はせっかくお金を集めるために発行した株式を買い戻すのでしょうか。そこには株価を上昇させてほしい株主からのプレッシャーと、株価を上昇させたい経営者の意向が関係しています。

 

ROE(自己資本利益率)の向上

ROE(自己資本利益率)とは、その企業が自己資本(≒出資者から集めた金額+過去に稼いだ利益)の金額あたりどれだけの利益を稼いだかの指標で、より少ない自己資本でより多くの利益を稼ぐ企業が優秀とされます。自己株式の取得を行うとその企業のROEが向上します。

 

ROE(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

 

自己株式の取得をすると自己資本が減少するため、当期純利益が変わらなかったとしてROEを改善させることができ、企業の経営成績を良く見せることができるのです。

 

 

EPS(一株あたり利益)とBPS(一株当たり純資産価額)の向上

EPS(一株当たり利益)とは、企業が稼いだ利益を発行済株式数で割った数値で、BPS(一株当たり純資産価額)とは、純資産(資産から負債を引いた金額)を発行済株式数で割った数字です。投資家にとってはこのEPSとBPSがより高い株式が魅力的であり、株価が上昇しやすくなります。

 

EPS=当期利益÷発行済株式数

BPS=純資産価格÷発行済株式数

 

自己株式の取得をすると発行済株式数が減少する(市場に出回っている株式が減少する)ため、当期純利益や純資産価額が変わらなかったとしてもEPSやBPSを改善させることができ、その企業の株式をより魅力的に見せることができ、結果として株価の上昇につながりやすいです。

 

 

株式売買の需給が改善し、株価が上昇しやすくなる

企業が株式市場から自己株式の取得を行うと、株式市場には多くの買い注文が入ることになります。株式市場における株価は、投資家からの買い注文と売り注文を組み合わせて決められていることから、より多くの買い注文が入れば株価は上昇しやすくなります。

 

 

「今は株価が割安」という投資家へのメッセージとなり株価が上昇しやすくなる

企業が自己株式の取得をすることを発表すると、投資家は「その企業は今が割安なんだな」と考えます。なぜかというと、自己株式の取得をすることを決めた企業の経営層は、その企業の業績や今後の戦略についてもっともよく知る存在です。その経営層が自社の株式を購入することを決めたということは、今後株価が上がる材料を抱えていたり、その時点の株価が割安だとその企業の経営層は考えていることになります。

 

つまり、企業が自己株式の取得をするということはその会社の株価がお買い得であることを示す投資家へのメッセージともいえるのです。

 

 

企業の資金繰りは悪化する

企業は自己株式を取得(購入)するために現金を支払う必要があるため、企業の現預金残高や資金繰りは悪化します。

 

 

自己株式の取得時の仕訳

<設例>

自己株式を100円で購入し、購入手数料20円とともに、証券会社に120円を支払った。

 

自己株式 100 現金 120
営業外費用 20    

 

<解説>

・取得した自己株式は、取得原価をもって自己株式勘定に計上します。

 

・自己株式の取得に関する付随費用は、営業外費用に計上します。

・自己株式を購入する場合は約定日ではなく、決済日に計上します。

※自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針-5

 

 

自己株式の消却時の仕訳

<設例と仕訳>

自己株式を100円で購入し、購入手数料20円とともに、証券会社に120円を支払った。

 

その他資本剰余金 100 自己株式 100
営業外費用 20 現金 20

 

<解説>

・自己株式を消却した場合には、消却手続が完了したときに、自己株式の帳簿価格を減額し、同額をその他資本剰余金から減額します。

・自己株式を消却したときの付随費用は、営業外費用に計上します。

 

 

自己株式の売却(処分)時の仕訳

<設例と仕訳①>

100円で購入していた自己株式を80円で売却した。これに伴い、売却手数料10円を支払った。

 

現金 80 自己株式 100
その他資本剰余金 20    
営業外費用 10 現金 10

 

<設例と仕訳②>

100円で購入していた自己株式を80円で売却した。これに伴い、売却手数料10円を支払った。

 

現金 120 自己株式 100
    その他資本剰余金 20
営業外費用 10 現金 10

 


<解説>

・自己株式を売却(処分)したときの差益は、その他資本剰余金に計上します。

・自己株式を売却(処分)したときの差損は、その他資本剰余金に計上します。

・自己株式の売却(処分)したときの付随費用は、営業外費用に計上します。

 

 

自己株式を購入する目的は?取得・償却・売却の仕訳 まとめ

企業が自己株式を取得する目的についてご理解いただけましたでしょうか。今回はここまでとします。