今回は「経理が転職しやすい理由6選」ということで、経理職が転職しやすいと言われる理由の解説や経理職のメリットデメリット、経理としてのキャリアプランなどについて解説します。
<記事の内容>
- 経理が転職しやすいと言われる理由は?
- 経理のメリットデメリット
- 経理になるには?経理でステップアップするためには? ほか
経理の仕事は汎用性のあるスキルが身につく仕事として、キャリア志向の人たちから根強い人気がある職種です。
経理というと地味な事務職をイメージするかもしれませんが、それは経理業務の本当に末端の仕事で、本来の経理の仕事は会社の経営成績を分析して経営者とともに会社経営のかじ取りをするのが役割です。
経理の仕事はその汎用性の高さから転職がしやすく、会社の経営に関わるやりがいのある仕事なので、これから経理を目指している方や経理でのキャリアアップを狙っている人は、ぜひ本記事の内容を参考にしてみて下さい。
経理が転職しやすい理由6選
様々な職種の中でも、転職がしやすいと言われる経理の仕事。経理の仕事は一体なぜ転職がしやすいといわれるのでしょうか。その理由を見てみましょう。
<経理が転職しやすいと言われる理由6選>
- 経理はどこの会社でも必要な職種
- どの会社でも業務内容が似ているので、スキルに汎用性が転職後もすぐに戦力になる
- 育成に時間が掛かる職種なので、欠員時には中途採用されることが多い
- 資格が活かせる【簿記、税理士、会計士、英語など】
- スキルレベルが可視化しやすいので、アピールが簡単
- 求人数が多い【1社ごとの採用枠は少ない】
経理はどこの会社でも必要な職種
企業が経営をしていく上では決算や税金の計算、納税手続きといった事務作業は絶対に必要な業務なので、経理職の人材は必ず雇用していなければいけません。
会社の規模が大きければ専任の経理職を何十人も抱えていたり、会社の規模が小さい場合は人事や総務などと兼任の人材がいるなど、形は様々ですが経理の仕事をする人間は会社にとって欠かせません。
ここしばらくは「経理はAIに代替されてなくなる」と言われることも多いですが、経理業務にAIを導入するためには経理業務を熟知した人材が必要ですし、経理が分析した情報をもとに経営者にアドバイスをするような業務はAIが広まっても代替することは極めて難しいです。
会社がビジネスを行い、決算や納税をする手続きがある限り、経理はどこの会社にも求められる職種と言えますね。
どの会社でも業務内容が似ているので、スキルに汎用性が転職後もすぐに戦力になる
経理の仕事は簿記のルールや会計基準、税法といったどの会社でも同じ共通のルールに従って業務を行っていきます。
そのため、どこの会社に行ったとしても業務内容が似通っていて汎用性が効き、比較的早期に戦力化することが可能です。
例えば、営業の仕事であれば得意先との関係性、自社の営業ルール、自社の商品やサービスの内容などを身に着けることが欠かせないですが、そういったスキルは別の会社に移ってしまえばほとんど役に立たないですよね。
その点、経理のスキルや知識は会社が変わっても同じように活用することができることが、経理は転職しやすい職種と言われる理由の一つになっています。
育成に時間が掛かる職種なので、欠員時には中途採用されることが多い
経理はゼロから育成しようとすると一人前の人材を育てるには長い時間がかかります。
これは会社の決算が年次ベースで行われ、個人のスキルは年次決算を何回経験したかによるところがあるので、経理としてある程度全体の仕組みが分かるようになるには短くても3~5年程度の期間が必要になってしまうためです。
また、会計の基本ルールである簿記は人によって適性があるため、適性がない人が勉強してもなかなか身につかないことがあるので、そういった意味でも経理人材の育成は経営者にとって悩みのタネになりがちです。
このような理由から、経理で欠員が出た場合や増員をしたい場合には、新卒を育成するよりも中途採用が重視されます。
経理は一度知識と経験を身に着けてしまえば、中途採用の門戸は広く開かれています。
資格が活かせる【簿記、税理士、会計士、英語など】
経理の仕事をしていくには資格を取っておくと、転職時や昇格をする際に非常に有利です。
特に日商簿記検定は経理の仕事を始めるための試金石ともいえる資格で、日商簿記検定2級程度を取得できるかどうかが採用可能性の有無や本人の経理への適性面でのポイントになります。
<経理が持っていると高評価な資格>
- 公認会計士
- 税理士
- 日商簿記検定
- TOEIC、TOEFL など
経理系の資格は上位の資格を持っていると幹部候補として昇格しやすくなったり、より給与水準の高い会社に転職出来たりするので、経理系の職種で働いていきたいという人はぜひ資格取得にチャレンジしてみて下さい。
また、最近では外資系企業だけでなく、日系企業でもある程度の規模の会社で仕事をするとなると、海外とのかかわりが出てくるのでTOEICやTOEFLといった資格もあると高評価です。
経理×英語の両方ができる人材は非常に貴重なため、あらゆる企業で引き合いがあります。
スキルレベルが可視化しやすいので、アピールが簡単
経理の仕事は非常に幅広く、すぐにすべての仕事を身に着けるのは無理なので、簡単な仕事から徐々にステップアップしていきます。
具体的には、経費精算や売掛金の管理といった会社の動きの一部分を管理する仕事からはじめていき、一通りの流れが分かっていくにつれて決算や税務申告、資金繰りといった会社の動き全体的に管理する仕事に移っていきます。
会社全体の動きを全体的に管理する仕事は、知識や経験ともに高いレベルが求められるため、このレベルの人材はほとんど転職に困ることはないでしょう。
<会社の動きの一部分を管理する仕事(難易度・低、市場価値・低)>
- 伝票起票
- 経費精算
- 現預金の照合
- 売掛金の計上と回収管理
- 買掛金の計上と支払管理
- 固定資産の取得と減価償却 など
<会社の動きを全体的に管理する仕事(難易度・高、市場価値・高)>
- 決算
- 税務申告
- 開示(上場企業の場合)
- 資金繰り
- 予算策定
- 経理システムの導入・運用
- 子会社管理 など
このように経理の仕事は自分の知識や経験(どのレベルまでできるか)が可視化されやすいので、書類選考や面接で自分のスキルのアピールがしやすいと言えます。
また、どの会社でも同じような業務をやっているので、他社の人材が面接にきても話が通じないといったことはほとんどないのも、転職がしやすいポイントの一つでしょう。
求人数が多い【1社ごとの採用枠は少ない】
前述の通り、経理の仕事はどこの会社でも必要とされる仕事なので、全体的な求人数は非常に多いです。
しかし、どこの会社でも経理部門はすでにありますので、採用形式としては欠員補充や増員といった形になります。
そのため、1社ずつが募集する採用予定人数は少なくなりがち(一人とか二人の採用枠が多い)なので、行きたい会社で経理の求人が出ていたらタイミングを逃さず応募しておくのが経理転職のコツです。
一度、欠員枠や増員枠が埋まってしまうと数年は採用活動をしないという会社も多いですので(そんなに頻繁に欠員が出る会社には行きたくないですよね。)、自分のキャリアプランニングの一環として出回っている求人は常にチェックしておきたいですね。
経理の仕事内容

転職のしやすさで人気の経理の仕事ですが、その仕事内容の一部をご紹介します。
経理の仕事といってもその仕事内容は多岐にわたり、よりレベルの高い仕事ができるようになると、転職も更にしやすくなっていきます。
<会社の動きの一部分を管理する仕事(難易度・低、市場価値・低)>
- 伝票起票
- 経費精算
- 現預金の照合
- 売掛金の計上と回収管理
- 買掛金の計上と支払管理
- 固定資産の取得と減価償却 など
<会社の動きを全体的に管理する仕事(難易度・高、市場価値・高)>
- 決算
- 税務申告
- 開示(上場企業の場合)
- 資金繰り
- 予算策定
- 経理システムの導入・運用
- 子会社管理 など
仕訳起票
会社で発生した取引の仕訳を会計システムに入力する。
経費精算
従業員の出張旅費や、立替経費などの精算。
現預金の照合
銀行残高と帳簿残高、金庫の現金残高と帳簿残高を照合する。会社の規模が大きくなると月に数百件、数千件の入出金があるので、会社規模によっては非常に大変な作業になる。
売掛金の計上と回収管理
商品を売ったら売掛金を記帳。取引先から入金が来たら売掛金を消去し、売掛金の回収漏れがないように管理する。
買掛金の計上と支払管理
商品や材料を仕入れたら買掛金を計上。取引先に支払いをしたら買掛金を消去し、買掛金の支払い漏れがないように管理する。
固定資産の取得と減価償却
備品や設備を購入したら固定資産として帳簿に記帳。減価償却費を計算する。
決算
貸借対照表や損益計算書などの決算書類を作成する。最近では会計システムが自動で決算書を作成してくれるので、作成した決算書に誤りがないかのチェックや決算内容の分析を行うのが主な経理の業務。
開示(上場企業の場合)
上場企業の経理の場合には、定められたルールに従って四半期ごとに決算書類を開示する。開示すべき書類には決算短信や有価証券報告書などがあり、非上場企業に比べて非常に詳細な決算資料を作成しなければならない。また、決算書類の開示は提出期限までの期間が短いことや、記載ミスや計算ミスが許されないのでプレッシャーが高い業務。
税務申告
企業が納めるべき税金(法人税、住民税、事業税、消費税、固定資産税、事業所税など)を計算し、納税する。企業が納めるべき税金は税目が多く、計算方法もそれぞれ異なることから難易度は高め。
資金繰り
会社の現預金が枯渇しないように会社のお財布管理をする仕事。会社が大規模な投資(設備投資や灌漑進出など)をするときに、どれくらい使えるお金があるかを計算したり、お金が足りない場合には銀行借入を行ったりもする。
予算(業績見通し)策定
会社の予算(業績見通し)を策定する。作成した予算は、その会社の売上やコストの目標値として設定され、その目標値の達成を目指して各部署の社員が日々の業務に邁進する。正確な予算策定ができていると経営層が会社の未来を予想することができ、迅速な経営判断ができるようになる。
会計システムの導入・運用
現在の経理業務は主に会計システムで管理されていて、その保守運用をする仕事。経理業務とITの両方の知識が必要になるので難易度が高い一方で、会計システムにエラーが起こると決算が締まらなくなるので、責任の重い仕事でもある。
子会社管理
子会社がある会社(親会社)の経理の場合には、子会社管理の仕事がある場合もある。子会社から定期的に業績レポートを受取り、業績に問題がないかモニタリングをしたり、経営の方向が誤っているときには親会社から指示をする場合もある。
経理のメリット

これから経理職への転職を目指している方向けに、経理のメリットデメリットをご紹介します。
まずは経理のメリットから見ていきましょう。
<経理職のメリット>
- 転職しやすいので、ステップアップ転職やブラック企業からの脱出が容易
- ブランクがあっても再就職もしやすい
- 資格で評価されやすい
- 閑散期は休みがとりやすい
- 会社の重要案件に携われる
- 会社の経営状態が分かる
転職しやすいので、ステップアップ転職やブラック企業からの脱出が容易
経理の仕事は転職がしやすいので、今の職場にしばられることなくステップアップ転職をすることや、うっかりブラック企業に入ってしまった場合の脱出が容易です。
今の仕事内容にある程度は満足していても、自分の経験値が高まったり、より上位の資格を取得したりすると、より給与水準が高い企業や規模の大きい企業への転職をしたいと思うことがあるかもしれません。
また、自分の働いている会社がブラック企業で、異常に残業が長かったり、土日出勤も当たり前、上司のパワハラがひどいといった場合でも、経理の仕事のスキルがあれば比較的簡単に転職をすることができます。
現代は変化が激しい時代で、今の会社のビジネスモデルが10年後、20年後に生き残っているかどうかわかりませんので、いつでも時代の流れにのって会社を移れるというのは経理の大きなメリットでしょう。
ブランクがあっても再就職もしやすい
経理はその転職のしやすさから、将来出産・子育てなどでキャリアにブランクを予定している方にも人気があります。
日本社会では、一度職歴に穴が開いてしまうとなかなか正社員で復職するのが難しく、かといって派遣や契約社員ですと待遇があまりよくなかったりします。
経理で実務経験を積んでおけば、しばらく子育てなどで休職していても、あまり高望みしなければ新しい仕事を比較的簡単に見つけることができます。
今は、専業主夫よりも共働きが増えていますので、仕事と子育てを両立したい方には経理の仕事はおすすめですね。
資格で評価されやすい
経理の仕事は、仕事の結果はもちろんですが、保有している資格で評価される面もあります。
簿記3級で実務をバリバリやっている人よりも、簿記1級保有者が優遇されるようなこともあったりします。
仕事で結果を出せるかどうかは、タイミングや上司との相性など運による部分も大きいですが、資格だけであれば自分の努力次第で取得することができます。
自分の努力次第で会社からの評価を高めることができるというのは、キャリア志向の方には有利なポイントかもしれません。
閑散期は休みがとりやすい
経理の仕事は、繁忙期と閑散期がはっきりしている職種で、繁忙期は確かに大変ですが、閑散期は比較的有給休暇などもとりやすいく、メリハリのある働き方ができます。
繁忙期は月末月初で、閑散期は月の中ごろという会社が多いと思います。
更に上場会社の場合は、四半期月の月末月初が忙しくなります。
会社の重要案件に携われる
経理の仕事は経営の参謀役であるため、会社で大きなお金の動く重要案件がある場合、必ずと言っていいほど経理部門がその案件に参画します。
なぜなら、大きなお金が動く場合には経理が資金繰りを検討してお金を出すことができるか検討しなければいけませんし、その案件が経営成績に与える影響を試算するのも経理の仕事だからです。
経理職でも下っ端のうちはそのような機会がない場合もあるかもしれませんが、経理部門の管理職や役員となれば、会社の重要案件にはほぼ必ず携わることができるので、やる気のある人にはやりがいがある仕事でしょう。
会社の経営状態が分かる
経理の仕事は会社の経営成績を見える化する仕事なので、ある意味社長よりも会社の経営状態がわかります。
そのため、「最近、会社の経営成績が良いから次のボーナスはたくさんでるかも」「会社が資金繰りに行き詰っているから下手をすると倒産するかも」といったことが、会社の中で最初にわかります。
















